ジャパンモビリティショー 2025の概要:ハイライト、トレンド、そして魅力的な車たち

Translated by Shiho Baisho

日本自動車工業会(JAMA)は、隔年で「ジャパンモビリティショー」(旧称:東京モーターショー)を開催しています。当然私も2年ごとに東京ビッグサイトへ足を運び、普通に考えたら挑まないような大混雑の会場に足を踏み入れます。毎回来場者数は100万人(※)を超えており、2025年のイベントも例外ではありませんでした。

本コラムシリーズ2023年の記事では、パンデミックによる中断を経て再開されたイベントのリブランディングに焦点を当てました。今年も展示ホールには飛行機、VTOL(垂直離着陸機)、ボートなど並んでおり、従来の自動車ショーではなく「モビリティイベント」としての役割が定着したように感じられました。しかし一方で、多くの自動車メーカーの力点は、その新しいテーマからやや離れ、空飛ぶタクシーやパーソナルモビリティ機器よりも、従来型の四輪車に重点を置いていたように感じられました。

例えば、2023年に主役を飾ったスバルの空飛ぶ車のコンセプトは、今年のショーでは姿を消していました。またホンダは、2023年には同社のメイン展示スペースで人気を集めていたパーソナルモビリティ「UNI-ONE」を、今回はメイン展示スペースではなく、「Tokyo Future Tour 2035」展示のスペースに移していました。コンセプトを考えると展示エリアの変更は納得できるものですが、来場者はUNI-ONEを見逃しやすくなってしまったと言えるでしょう。

スバル、マツダ、日産を再訪して

2023年以降、各社がどのようにポジションを変えてきたのかを見るのは興味深いものでした。2年前のモビリティーショーで、スバルはスポーツカーの車種をおし出すことを避けているように見えました。しかし今年は、2台のコンセプトモデルを堂々と展示の中心に据えていました。「Performance-E STI concept」と「Performance-B STI concept」を初公開したのです。

一方、2023年のマツダは伝説的なロードスターを堂々と披露し、超スポーティな「Iconic SP」を展示しましたが、今年の展示車両はすべて実用的なタイプでした。記事冒頭に掲載した「Mazda Vision X-Coupe」は、美しいデザインと革新的なパワートレイン(微細藻類由来のカーボンニュートラル燃料を使い、CO2回収も可能なロータリーエンジン)を備えているにもかかわらず、スポーツカーというよりは高級車の位置づけでした。

The Subaru Performance-B STI

日産は、近年のショーにおいて最も打ち出し方が一貫しています。今回も可能な限り多くのモデルを展示し、従来のモーターショー体験を提供していました。同社は経営難にもかかわらず、展示スペースに最も凝ったデザインで郊外の生活を描くという分かりやすい展示をしていました。ただし、その展示スペースも「GT-R」不在という残念な点がありました。というのも、この名車はショーの数か月前に惜しくも生産終了となっていたからです。

トヨタの勢いがショーの流れを作る

驚くことではないかもしれませんが、今年のショーで最も圧倒的だった企業はトヨタでした。トヨタは、モビリティショーで丸ごとひとつのホールを使い、自社の車両を全力で展示していました。さらに自社の長い歴史を強調するかのように、同社が初めて製造した車両(モデルAA乗用車とG1トラック)を展示していました。その歴史的な車両は、おそらく名古屋近くにある、呼び声高いトヨタ自動車博物館から持ち込まれたものでしょう。

The historic Toyota G1 Truck

トヨタに関しては、愛され続けるFJクルーザー(ランドクルーザーFJ)のコンパクトサイズ版での復活や、6輪のレクサスLSコンセプトによって、モビリティショー開幕前から大きな話題を呼んでおり、現地の群衆は自然とトヨタの展示エリアへと引き寄せられました。さらに、音楽やダンスを取り入れた壮大なステージショーが途切れることなく繰り広げられ、世界に向けて同社の圧倒的な存在感を示しました。

トヨタこそが日本の自動車産業そのものと言える存在感。その圧倒的なものはモビリティショー全体を支配しており、他の自動車メーカーを引き離すインパクトがありました。

The Lexus LS Concept

ジャパンモビリティショーは行く価値があったのか?

今回のジャパンモビリティショーは、はるばる移動し現地の人混みに耐えてでも来訪する価値はあったと言えるのでしょうか。確かに、現地を訪れるのは大変疲れる体験ではありますが、四輪の夢が詰まったコンベンションセンターと、業界の未来に広がる可能性の魅力に触れていると、楽しまずにはいられません。それが長年ショーを見守っている私の結論です。

the toyota the Land Cruiser FJ


最後までお読みいただきありがとうございました。

※日本自動車工業会「Japan Mobility Show 2025 Closes」ジャパンモビリティショー 2025 公式サイト、2025年11月12日時点