LinkedInでビジネスネットワークを主体的に広げる戦術:Japan Expert Insightsオンラインディスカッション

By Shiho Baisho

日本企業のLinkedIn活用について詳しいアンソニー・グリフィン(Saga Consulting プリンシパルコンサルタント)は、LinkedInが日本市場で馴染まない文化的背景がある一方で、大きな伸びしろもあると考えています。アンソニーは2022年9月、Japan Expert InsightsMaya MatsuokaさんとTim Sullivanさんが主催するオンラインディスカッションに参加し、LinkedInがもたらすビジネスネットワーク効果と、LinkedIn初心者へ向けた実践的な活用方法についてお伝えしました。

 INDEX

①日本ではLinkedIn活用が進んでいない?パンデミックが与えた影響

②自分のビジネスネットワークについて考えてみよう!

③企業がとるべきLinkedInコンテンツ戦術

④LinkedIn初心者、担当者はまずインフルエンサーのフォローを!


①日本ではLinkedIn活用が進んでいない?パンデミックが与えた影響

日本のLinkedInユーザー数は約300万人と言われています。皆さんはこの数字を多いと感じますか?少ないと感じますか?

全世界では8億人以上のLinkedInユーザがいて、利用者が多いアメリカでは2億3,000万人の人々が利用していると言われています。アメリカ人はそんなにソーシャルメディアが好きなのか・・と驚かれるかもしれませんが、LinkedInが多くの人に利用されているのは「ビジネスプロフェッショナル」のためのソーシャルメディアであるからです。実はアメリカ人も、仕事だけのつながりの人とFacebookで友達申請(フォロー)することにやや抵抗があります。プライベートな空間と仕事の空間を分けたいという意識は他国より強いと言われます。その点、ビジネスに特化したLinkedInならば、プライベートに関する投稿やコミュニケーションは不要であり、ビジネスの側面で自分を理解してもらうにはうってつけのツールなのです。実際、多くのビジネスパーソンが会社の名刺を交換するかわりに、それぞれのLinkedInアカウントを交換しています

このオンライン上のビジネスネットワークは、パンデミックによりさらに重要なものとなりました。様々な情報交換や議論、セミナーなどがLinkedInプラットフォームを介して行われると共に、LinkedInで個々人がもつアカウント自体が、ビジネス市場でのプレゼンス力と結びついてきています。


②自分のビジネスネットワークについて考えてみよう!

ビジネスネットワークとはなんでしょうか? なんとなくあやしい響きに聞こえてしまうでしょうか。本項では、LinkedIn上におけるビジネスネットワークの価値と、その留意点について考えていきます。個人アカウントでLinkedInを利用する場合、前項で触れた「プレゼンス」をビジネスネットワーク上で示しコミュニケーションをとることに大きな価値があります。その価値は必ずしも金銭的な取引だけではなく、キャリアに関する情報収集やコーチング、人脈づくりなど多面的にとらえることができます。日本では、自身の職務内容や業績について公にすることに抵抗を感じる人も多く、また1つの会社に長く勤めることを良しとする風潮から、転職歴などの多様なビジネスキャリアをネガティブにとらえる向きもあります。Saga Consultingでもこのような相談はたくさん受けており、アンソニーはそのようなネガティブな点を差し引いてもLinkedInを活用する価値は高いと主張し、プロフィールも含め、LinkedIn上での見せ方は、必ず履歴書と同じでなくてはならないわけではなく、好きなように書けばいいとアドバイスしています。例えば、現在の職業について詳しく書くのではなく、過去の仕事内容や専門性、また仕事以外でも多くの経験内容や思想についても表現できます。

一方、ビジネスネットワークと向き合う上での留意点はオーナーシップを持つこと。つまり、どのような人や企業、団体とつながるか自分でコントロールすることです。LinkedIn創始者のリード・ホフマンは「誰を自分のネットワークに入れるか、慎重に選ぶべきである」とコメントしています。世界中に広がるソーシャルメディアの中には、自分と異なる意見を持つ相手に対し過剰な反応をし、時には嫌がらせに近いコメントを入れたり、また関係なく個人的なダイレクトメールを送ってくる人もいます。このような相手は遠慮せずブロックするべきです。もちろん、つながりの申請が来た際は、そのコネクションが将来ビジネスにつながるかもしれないため、ブロックしていいか悩みます。その判断に対する実践的な方法としては、相手のプロフィールを確認しコネクション数や情報発信の質、また知り合いとつながっているかを把握することが重要とアンソニーは指摘します。また、そのような手間に時間を取られたくない人、申請相手から誤解されたくない人が取るべきテクニカルな方法としては、自身のアカウントページにあらかじめフォローボタン(コネクションボタンではなく)をデフォルト表示にすることや、自分から招待状を送る際は、できるだけデバイスにパソコンを使い、メッセージを添えて送信することがコツです。


③企業がとるべきLinkedInコンテンツ戦術

 規模の大小問わず、グローバルに活躍している企業はLinkedInを活用する価値は大いにあります。理由は先に述べた「プレゼンス力」および「オーガニックリーチ力」に集約されます。Saga Consultingがみてきた中では特にバイリンガルの個人事業主の多くはLinkedInから優良なビジネスリードを獲得できています。では企業の実践的なLinkedIn戦術で重要な点について考えていきましょう。

1点目は会社ページの立ち上げることです。個人プロフィールとは異なり業績や学歴は記載しませんが、会社の顔となるため、コーポレートブランドに配慮しなくてはなりません。会社ページを初めて作成段階から外部識者にアドバイスをもらうことも可能です。

2点目は、質の高いコンテンツを最低週1回投稿すること。投稿する内容も会社ページ同様企業カラーやルールに沿った内容にしなくてはなりません。アンソニーが薦めるコンテンツ形式は、PDFのホワイトペーパー(オリジナルの調査結果等をまとめたデータ集)や画像とテキストを組み合わせた投稿。またLinkedInに直接アップロードされた動画コンテンツです。Youtubeや外部ウェブサイト、ブログへのリンクを掲載することも可能ですが、LinkedInプラットフォーム内に直接アップロードするコンテンツの方が有力と言われています。

3点目は社員や関係者を巻き込みリーチが拡大できる点です。個人のLinkedInアカウントに比べ企業アカウントでは、投稿内容の自由が狭まります。他方、社員を中心とする関係者に投稿へリアクションをしてもらうことで、より拡散力が高まります。これらの方法を取り入れながら、随時インプレッション数などをモニターし、反応が良かったコンテンツを把握し、常にオーディエンスに魅力的なコンテンツを作る努力をすることが大切です。

④LinkedIn初心者、担当者はまずインフルエンサーのフォローを!

ここまでお読みいただいて、LinkedInを使ってみようと考えた方、また企業アカウントを運用しなくてはと考えた方には素晴らしいチャンスが待っています。なぜなら、前述のように世界ではLinkedInの大きなマーケットが広がっている一方、日本ではまだ発展段階であり。大きな伸びしろがあるからです。プロフェッショナルなソーシャルメディアを使いこなすにはコツと戦術、そして何よりも実際に使ってみること大切です。ぜひ、みなさんご自身が気に入っている会社や、ベンチマークとしている会社のアカウントなどをフォローし、どのような情報発信を行っているか触れてみてください。また個人インフルエンサーでは、楽天の三木谷氏やマイクロソフトを創業したビル・ゲイツ氏などの著名人を1度フォローすると様々な著名人アカウントがリコメンドされるので参考になるかもしれません。

他のソーシャルメディアと同様に、LinkedInはあくまでもプラットフォームであり、コミュニケーションツールです。しかしLinkedInが持つ重要な価値は、ユーザーが自分のネットワークに対しオーナーシップを持ち、自ら構築していくところにあります。仮に小さいビジネスネットワークであっても、それが自分(もしくは自社)にフィットしており、高品質な情報のやりとりや、ビジネス機会をもたらしているのであれば十分ではないでしょうか。世界、事業環境が目まぐるしく変化する現在、主体的にネットワークに関与し、つながりの中で相互に価値を高めていくことは、プロフェッショナルとして生き残る重要な武器のひとつと考えます。


 最後までお読みいただきありがとうございます。